日本アニメ業界について、ジブリ初期制作デスクから学んだ事

アニメを見て育った人にはたまらない会話を、天空の城ラピュタ、「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」の制作デスクを担当された木原さんと交わす機会がありました。

70年代に現れたオタクという言葉も、当時の暴走族などにちなんで、オタク族と呼ばれていたという事から、社会的に蔑まられていたというのが伺えた。そんな初代オタクであった木原さんは庵野秀明さんとの出会いも、手紙を通じて、自宅で「オフ会」を行ったという今では考えられないエピソードがあった。

80年代のアニメ業界の「師弟関係」もまた、今では考えられないほど厳しく、血反吐を吐きながらも理想とする作品を共に築き上げていく事によって生まれる信頼と絆は、今の日本で殆ど見かけないのではないでしょうか。

風の谷のナウシカやジブリの秘話に関しては、ここでは紹介できませんが、ラピュタやトトロの裏話を知りたい方は、木原さんの著書である『 もう一つの「バルス」』をご覧頂ければと思います。

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さて、オタクという言葉は、今の日本でもそうそうポジティブな名詞とは言えないが、海外では「おお~」という声があがり、尊敬もされるほどの存在である。初代オタクである木原さんは、海外の大学やイベント、そしてPIXARにも引っ張りだこ状態。アニメータやクリエイターから尊敬され、常に会場を沸きたてているトークも、日本国内では反応が乏しい上、講演も極めて少ないというのはとても意外でした。

そんな木原さんが忘れもしないイギリスでの初海外講演で、ある女の子が「私もアニメータになれますか?」という質問に対して、「今日は聖闘士星矢を描き、明日はガンダムを手掛けるけど、それでもやれるか?」と返答し、その女の子が仰天したという。

日本のアニメータ過酷な仕事であるにも関わらず、給料はたったの18万というのも信じられないような話だ。PIXARのアニメータは倍以上の給料があるだろうし、違うとはいえ、何故それほどの差があるのだろうか?

木原さんとの対話は主にジブリ関連だったので、その辺りは詳しく話せなかったが、考えられるのは、アニメ業界の構造とキャラクター、つまりIPに対する戦略の違いかもしれません。

PIXAR、ディズニー、マーベルといったスタジオは、キャラクター構想の時点から市場での経済価値と運用を綿密に計画している。これらのIP(知的財産)をどう活用、誰にライセンスを与えて、どういうグッズを、いくらで、どんな形で出していくというエコシステムが構築されており、時代の変化に合わせて、日々進化させている。

世界に誇るジブリの数々の作品の中でも、こういった成功を収めているの顕著な事例としてはトトロのみ。最近ではワンピースや呪術廻戦が人気だが、アメリカのスタジオに比べたら、マネタイズに纏わるエコシステムがまだまだ幼少期のような気がする。

既に放送が終わっているアニメの再利用や再販が海外でなかなか見かけない原因として、いくつかを挙げると:

1.製作委員会があり、古い作品では委員会メンバーが倒産や見つからないため、許可が取れない。

2.近年の作品でも、決定を下せる人が不明、探し出す過程に年単位の時間がかかり、キーパーソンが見つからない。

3.グローバル視点がなく、国によっては地上波のタブーのシーンやキャラクターがある。(巨乳を強調する峰不二子、タバコを加える次元大介、殺人事件が子供に降りかかるコナンなど)

海外での需要は大きい上、日本企業がもっとマネタイズ出来る事が明白である。上述原因も含めて、業界関係者でしか知らないような事情もあるでしょうが、この辺りを何とか変えることで、大事な仕事をしているアニメータにももっと収入が増えるような構造を築き上げて欲しいものです。でないと、十年、二十年という経験を積んできたアニメータは、低収入や体力低下によって、脱落してしまうことになる。それは業界のロスであり、世界中のアニメファンにとっても悲しい事実である。

それに、変化に気づかず、そしてアクションを起こさないゆでガエルのように過ごしていれば、いずれは韓国、中国や他の国のクリエイターが日本を追い込み、時間はかかるかもしれないが、最終的に半導体やエレクトロニクス業界のように、衰退していく可能性も十分あるのではないでしょうか。

それだけは見たくないですね。一アニメファンとして。

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